登山用具の話

その2 ストーブ                    池上 卓男

 キャンプ道具で言うコンロである。

 大学2年の時まで使っていたのは、米軍放出品の1個10円也の缶に入った

固形燃料ならぬ綿くずにアルコールを染み込ませた物であった。当時としても

安い部類だったので大量に買っておいた。

小さな缶であったが、なんとかインスタントラーメンを作ったりお茶を沸かす

ことはできた。また、焚き火をする時多少木が湿っていても点火した缶の上に

薪をのせ、缶ごと燃やしてしまうことで簡単に点火できた。

 エスビットという固形燃料を使ったこともあったが、高価で高校生には使い

続けられる物ではなかった。


 大学3年の時、初めてガスストーブを買った。プリムス製でボンベは殺虫剤

スプレーの缶と同じでかなり大きかった。これは社会人になって矢板岳友会に

入るまで使い続けた。


 岳友会ではガスコンロは使わずガソリンストーブを使っていた。ホエーブス

というやつである。火力は強く合宿で使うには便利であったが、なんせ音が大

きく気になって仕方がなかった。私とは反対にこの音がいいという人も多い様

だが、ガソリンと聞いただけで危ないと思っていた自分には肌が合わなかった。

しかし、今と違って、熱をボンベに伝える装置もないブタンだけのガスカート

リッジ式のストーブは、冬の寒さには全く無力であった。


 その後何種かのストーブを買ったが、コールマンのピークワンに出会ってか

らは20年近く使い続けている。なんと言っても火力調整機能がすばらしく、

一番弱火にしても火が消えることがない。針金で作った餅網で餅やパンを焼い

ても他のストーブと違って黒焦げにならず焼くことができるのである。最近の

ピークワンはコストダウンの為か、一番の特徴であった火力調整つまみが点火

用のそれと共用となってしまい、弱火の設定が難しくなっているようであり残

念である。何時しか強火の時の燃焼音は気にならなくなっていた。


 東京に来てからは家族揃ってのキャンプに凝ったときもあり、ピークワンだ

けでは5人分を料理するには不足したため、大型のキャンプ用の2口コンロを

買った。しかしお茶やコーヒーを入れたりハイキング先のストーブとして必ず

ピークワンを持っていった。


 しかし、最近直径9センチ程のブタンとプロパン混合の小さなガスカートリ

ッジが売り出された。10年ほど前、下山中に膝が折れてしゃがみ込んだこと

があり、その昔両足の靱帯をのばしてしまっていたことが判明した。医者の薦

めもあって妻とハイキングを再開した身には軽量な装備は非常にありがたい。

そろそろピークワンの出番も無くなってくるのだろうか。